山手幼稚園は１９４９年（昭和２４年）９月、日本キリスト教団呉山手教会付属幼稚園として現在の地に設立されました。それは第一に、敗戦後の荒廃の中で幼児教育の必要性を痛感し、地域に住む人々のニードに応えるためで、以来60年以上にわたり多くの卒園生を送り出してきました。第二にこの地で長く「軍人ホーム」を経営してこられた十時キク女史の尊い遺志を継ぐために始められました。
　十時先生は１９０８年（明治４１年）、故郷を遠く離れた若い兵士のために「軍人ホーム」をつくり、家庭的な雰囲気の憩いの場を提供し、母親のような暖かさで多くの青年に信頼されました。しかし、１９４５年７月呉市は空襲によって焼失しました。翌８月の敗戦と海軍の壊滅で「軍人ホーム」はその役割を終えました。そのことを象徴するかのように十時先生は過労から病に倒れ、翌年亡くなりました。教会は先生のボランティア精神と奉仕の働きを記念するため「十時記念館」を造り、幼稚園を運営してきました。
　１９９２年、教会創立１００周年を記念して新しい園舎が建てられ「十時記念館」は無くなりましたが、その精神を今も、これからも活かしていきたいと願っております。その精神とは、キリスト教信仰に裏打ちされたヒューマニズムです。即ち人間は神の前で平等である。人間は一人一人掛け替えのない貴重な人格的存在である。それぞれに与えられているタレント（神の賜物）を活かして意義ある人生を送ることが人間の課題である、というようなことです。
　当園は１９８８年（昭和６３年）３月、公的責任をよりよく果たしていくべく経営基盤の安定をはかるため、学校法人の認可を受けて、県を通じて国の私学助成金を受けるようになりました。
　幼稚園は子どもが家庭を出て、おそらく初めて経験する機能的社会集団でしょう。子どもたちは、それぞれ全く違った背景と個性をもつ他人と出会い、相互に影響し合って成長していきます。幼稚園は、親と教師が密接に協力して子どもの成長を見守り、必要な援助を提供するところです。そのために何よりもお互いに信頼し合い、良い関係で結ばれ、共に学び合い助け合って、家庭・学校それぞれの役割を果たしていきたいと思います。
　山手幼稚園に入園されるお子さんたちを、私たちは心から歓迎いたします。この出会いが本当に素晴らしいものになりますよう願っております。お子さんと、ご家族皆様の上に神様の祝福と恵みが豊かにありますよう祈ります。